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日本の統治構造―官僚内閣制から議院内閣制へ (中公新書)


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  • 飯尾 潤
  • 中央公論新社
  • グループ:Book
  • ランキング:14659
  • 価格:¥ 840
  • 発売日:2007-07
  • 通常24時間以内に発送
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カスタマーレビュー 総合評価:

ほんとうに統治構造がよくわかります  (2009-01-04)
これも宮崎哲弥おすすめの新書。
目からうろこの。

意外と誤解されているが、一般的に言って、議院内閣制は大統領制に比して、トップ=内閣総理大臣に権限が集中するシステムである。しかし、日本では総理大臣の権限が弱いといわれる。なぜか。著者によれば、これは「官僚内閣制」から生まれるものだという。通常の議院内閣制では、選挙によって選ばれた代議士によって構成される議院の信任を得て総理大臣が選ばれ、総理大臣が各大臣を任命することで、強力な権限が総理大臣に集中する。しかし、実際には各大臣はしばし総理大臣に従わず、各省庁、つまり官僚の言いなりになって行動するように見える。これを半ば揶揄して著者は官僚内閣制と呼ぶ。

このことの背景にはもちろん自民党の派閥の構造がある。総理大臣といえども、各派閥の意向は無視できず、大臣選定には派閥ごとの割り当てを考慮する。これによって、適材適所ではなく、派閥の権力バランスを考慮して大臣が選ばれる。大臣には、実際に官僚を指導する力を期待することができない。

一方、官僚をコントロールする「仕組み」がないわけではない。「与党・自民党」がこれを担っている。

<これまで述べてきたように、現代日本では、「官僚内閣制」のために、首相支持の議院による政府への統制が十分ではない。それを補うために、彼らは「与党」という自らの政府を内閣の代替物として持ち、それを通じて官僚制を統制しようとするのである> (p. 81)

つまり、官僚は大臣ではなく、実質的に自民党によって統制されている。これは、組織的に言って非常に奇妙な事態である。自民党の国会議員は、他国の議員と比べると、党本部で過ごす時間が異様に長いという。公的統治機構である政府と、私的政治団体である自民党とがいかに渾然となっているか、それがいかに異常な事態であるか、本書を読むとよく分かります。淡々とした筆致だけど、書かれている内容はショッキングな一冊。

日本の政治はどのように動いているのか  (2008-09-17)
日本政府の政治体制がどうなっていて、どのように政策が作られてくるのかを明快に記述した本。各文芸賞を受賞したことも頷ける、素晴らしい本である。

日本は議院内閣制を取っていると言われる。しかし著者は、その実態は官僚が政策を主導する「官僚内閣制」であると主張する。また各国務大臣の力が弱く、官僚組織や族議員の力の強い日本の体制を「省庁代表制」であると説く。適切な概念の設定だ。

しかし単に「縦割り行政」や「族議員」を批判して終わる本ではない。それらがどのような歴史の中で生まれたのか。どのような依存関係にあるのか。そうして政策がどのように立案され、採用され、実行されていくのか。この過程を記述していく様はまさに圧巻である。

日本全体の利害は「省庁代表制」によって調整されていた。しかしこのシステムは、時代の変化によりうまく機能しなくなっている。近年の政治の機能不全が何であるかについても、適切な指摘がなされる。そして、小泉首相時代の改革とは、本当の議院内閣制へと移行する改革だったのだと述べる。ここは評価が分かれるところかもしれない。

概念枠の設定による議論の整理、歴史的経緯への深い理解、国外の事例と比較する眼。これらによる議論は、驚くほど明快で、爽快である。少しでも日本政治に興味があるなら、必読の本である。短命すぎた首相を嘆くTVブルースに付き合っている暇があるなら、本書を読むべきだ。


「大統領制の大統領に比べて、議院内閣制の首相の方が、権力が強い」
「内閣に非国会議員があまりに多いと問題にするのは、議院内閣制と<議員>内閣制の混同である」
「日本人が抱く大統領制のイメージは、アメリカのそれよりむしろ韓国のそれである」
と言った主張を見るだけでも、眼を開かれるものがある。

官僚を使いこなし、政治家を育てるための理論武装として  (2008-09-01)
 飯尾潤は本書により、2007年サントリー学芸賞(政治経済部門)を受賞し、2008年には読売・吉野作造賞受賞している。
 飯尾は中曽根内閣や小泉内閣の手法に対し、「大統領型」或いは「大統領的」との冠が使われる場合があるが、その誤りの根源として「三権分立」の理解の誤りを指摘する。
 イギリスにおける絶対王政から議会権力による世俗権の奪取の過程における官僚制の変遷から、日本における官僚制の誤解を解き明かし、アメリカの大統領制と並立する三権分立と州と連邦に構成されるアメリカ憲法との比較から、日本における三権分立の俗流理解の誤りを解き明かす。
 明治憲法下の官僚制と戦後憲法下で変わるべきに関わらず運用により保持された戦時総力動員体制下の官僚の行動様式の連続性が指摘される。
 ややもすると選挙制度の変遷や政党の離合集散に目を奪われがちになるが、中央省庁の再編、地方分権、副大臣制。政務官制度等々行政のあり方が近年大きく変わりつつある。本書は、この背景にある「官僚内閣制から議院内閣制へ」の動きをも解明する。
 飯尾は本書で、「官僚内閣制」「省庁代表制」「政府・与党二元体制」等をキーワードに、日本政治の今を解き明かす。
 本書は冒頭に記した様な世間的評価を得たものである。学問的裏づけのある現代日本政治論を、論壇で展開出来る稀な学者が新書を著したことに感謝したい。

「日本は誰が動かしているのか?」硬派な一冊  (2008-08-19)
久々に硬派な新書に出会いました。かなり読み応えのある質の高い本でした。
議院内閣制における首相のほうがアメリカ大統領制よりも権力が集中している構造を指摘したり、官僚が(民間議員を含めた)審議会を活用して民意を汲み取って政策を立案している(それを政治家がしていない点に注目!)「官僚内閣制」と喝破したり。
日本の統治構造とはよく名づけたタイトルで、まさに日本を誰が動かしているのか、という点に考察を重ねていきます。
諸外国との比較も交えてあり、日本の統治構造の特徴、長所、短所も見えてきます。
個人的には、終章で著者が提言する政党のあり方に強く共感しました。日本でも政党活動が真の意味での国民の政治参加のベースとなれば、日本の政治も成熟するように思います。
硬派な一冊ですが、一読の価値あり、です。

日本の統治構造におけるジレンマに根底から疑義を叩きつける渾身の一冊  (2008-04-23)
 権力の分散を必然とする三権分立と権力の集中を必然とする議院内閣制の採用をとるわが国日本は、このジレンマを抱えているが故に機能不全に陥りやすい。
 野党の審議拒否による与党の強行採決などを見るにつけても自民党の一党独裁体制と揶揄されがちであるが、むしろそうではなく逆であり、権力の分散故に、所轄省庁による法案作成は他省庁や野党への配慮もあって妥協案へと収斂していき抜本的な改革が起きにくい。さらに内閣は省庁を監視、統制する権限が与えられていないが故に官僚の放縦がおきやすい。
 このような内閣による省庁統括権の欠如は、戦前からの遺物であり、こうした権力の分散による足並みの揃わない流動性の欠落が軍の暴走を誘発し、無謀な日米戦争の突入の一因を担ったという。こうした機能不全は、現代においても例えばバブル崩壊後の「失われた10年」に見られる財政政策の後手後手による対応の遅さにおいても散見されうる。
 さらにこの自民党一党優位性は、選挙が政権選挙ではなくそれ故に国民の意見が反映されにくく政党政治として機能していないという問題点も挙げられる。
 そこで本書は、内閣の求心力の強化から権限の範囲を拡張し、本格的な議院内閣制へとシフトすることの必要性を提示する。そのためには一党優位性から二大政党へと確立することで政党政治を機能させることで選挙が政権選挙となり、国民の意見が反映されにくい体質を改善することが必要である。一党優位性を起こしやすい中選挙から二大政党を起こしやすい小選挙への改変や「失われた10年」からの反省による橋本の政界再編改革といった国際潮流に迎合するような日本の統治機構の変遷に逆流せず、本格的な議院内閣制へシフトすることが難題ではあるが急務であると考えさせられる。

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