6月の軌跡―’98フランスW杯日本代表39人全証言 (文春文庫)
金子達仁ベストセレクション〈1〉「激白」―INTERVIEWS & OPINIONS
奇跡の代償
(2008-11-16)
先日G大阪がACLで優勝を果たした。
監督は西野朗、そうマイアミで奇跡を起こした監督。
だがその奇跡の代償は余りにも大きかった。
当時の彼の守備的過ぎる戦術はキャプテン前園や若き司令塔中田英に否定され、ブラジルへの歴史的勝利という結果以外何も残らなかった。
その後、優勝したナイジェリアに完敗し、ノルウェーに辛勝するも得失点差でGL敗退。
ブラジル相手に守備偏重な戦いをして勝てたのが分岐点となった。優勝候補のナイジェリア戦、同じく守備偏重にする西野と中田英の確執は決定的となる。
中田英は攻撃的に行くのを薦めるが、西野はDF陣の奮闘を無視したような言動をする若者を許せなかった。
そして完敗。
中田英はその後日本代表の中心として、仏、日韓W杯、シドニー五輪などで日本を牽引する存在となったが、結局自らのキャリアの集大成としていたドイツW杯で同じ過ちを犯した。
攻撃を薦めるあまりに、宮本を中心としたDF陣との確執を作り、チームを空中分解させた功罪は記憶に新しいが妙に懐かしくも感じた。
一方の西野は監督としてGL敗退の非難の対象として守備的戦術を責められたのを機に取り付かれたかのように攻撃サッカーを求めた。
まるで過去の自分を戒めるかのように…
そして柏でナビスコ制覇、G大阪でリーグ優勝、ナビスコ制覇、そしてついにはACL優勝という快挙をやってのける。
今現役引退した中田英はこの西野の攻撃サッカーをどう思っているのだろうか…
後に日本サッカーを牽引するまでになった二人が起こした奇跡への軌跡とその代償。
その後の両者の明暗も含めて興味深い真実の著書。
金子達仁の出世作にして彼の作品では最高の出来栄え
(2008-06-28)
スポーツライター金子達仁の出世作にして、僕の知る限りで彼の作品では本書が最高の出来栄え。
原型となったルポ「叫び」「断層」でミズノ・スポーツライター賞を受賞している。
1996年7月、アトランタ五輪でブラジル代表を破るというジャイアントキリングをやってのけた日本五輪代表チーム。そのメンバーの何人かは現トゥルシエジャパンでも活躍している。
「歴史的快挙」を成し遂げたその五輪チームが抱えていた「断層」を多面的に浮き彫りにしたのが本書最大の特長だ。
西野監督の、川口能活の、中田英寿の、前園の、小倉の、アウダイールの、それぞれの持つ、思い、認識、解釈・・・。そのズレから生じる「断層」、そしてチームの崩壊。
ジャーナリストは「事実」の切り取り方ひとつで「真実」をいかようにも伝えられるが、伝えられる側の「事実(五輪での戦い)の当事者」でさえ、それぞれの「真実」は異なり得る。
それでは「事実」とは「真実」とはいったい何だろう?
スポーツノンフィクションの傑作の一つと呼んでいい。
オススメ!
(2008-06-11)
日本オリンピック代表が、ワールドカップ優勝メンバーを3人揃えたブラジルを破ったアトランタオリンピック。この奇跡を詳細に調査し、多くの人物にインタビューを重ねて、非常にリアリティ溢れる形で一冊の本にまとめている。
マスコミに持ち上げられて自分を見失うメンバー、オフェンス陣とディフェンス陣の間にできた溝、初めて世間から注目されストレスを抱える監督、テレビでは知ることのできない出来事、人間関係。全ての文章がしっかり書かれていて、休むことなく一気に最後まで読みきることができた。筆者のサッカーに対する想いが良く伝わってくる本である。
前園・中田・川口等アトランタ世代を知っている人には、是非読んで欲しい本だ。
アトランタ組の悲劇
(2007-11-05)
いわゆる「マイアミの奇跡」を起こした前園率いるアトランタ五輪日本代表のドキュメンタリー。
当時はわからなかったチームの状況を克明に記録した物語で、こいつらちょー仲悪い。
これを読むと中田の成長ぶりもよくわかる。
当時の監督だった西野と対立しまくり。
サッカーの見方が変わる一冊。是非お勧め。
十で神童、二十歳を過ぎるとただの人??
(2007-09-11)
この本は、「マイアミの奇跡」と呼ばれた、96年・アトランタ・オリンピックでの日本代表勝利(対ブラジル)の内幕を描いたものである。このオリンピックの活躍で、前園を中心とする何人かの選手たちは、一躍時代の寵児としての扱いを受けるが、当時のチームは一枚岩とは言えず、むしろ崩壊寸前であった。タイトル中の「ハーフタイム」とは、後に大きく飛躍することになる中田英寿と、西野監督との、ハーフタイム時の出来事(確執)を表している。著者である金子は、やや中田よりのせいか、この本を読むと、対ナイジェリア戦・ハーフタイム時における中田の進言(「もっと積極的にいくべきだ」)が正しく、西野は間違っていたかのように思える。もし、この試合でナイジェリア(結果的には金メダル)を破っていたなら、決勝リーグ進出が可能だったのだ。
それは置いておくとして、ドリブラーを好む私としては、オリンピック後の前園には期待していた。サッカーをあまり知らないような人も含めて、多くの日本国民がそうだったかもしれない。しかし、残念ながら、前園は、オリンピック時(予選含む)と比べると、輝きを徐々に失い、悪くはない一選手になっていった。(一方、この本の主役格、中田は、圧倒的な存在感で、日本代表の牽引者となっていったのは周知の通りである。)
小野や稲本らの、いわゆるゴールデン・エイジの世代も、ワールド・ユースで準優勝という快挙を成し遂げたが、オリンピックではベストエイト、2002年ワールドカップではベスト16と徐々に順位を落としてきている。確かに、オランダ・リーグにおける小野の活躍は尊敬に値するが、この世代の相対的な順位は、やはり下がっているのだ。このことは、アルゼンチンやスペインが、ユース世代で活躍した後も、高い順位をキープしているのとは対照的ではないだろうか? 個人に目を向けても、たとえば昨年のオリンピックで活躍したイタリアのジェラルディーノ(対日本戦でも、あまりに素晴らしいゴールを決めたくれた)は、現在、セリエAの得点ランキングのトップを走っている。
こう見ていくと、どうも、サッカーの世界でも、中田のような例外を除けば「十で神童、二十歳で凡人」みたいな格言が当てはまるような気がしてくる。普通の学校教育は、まさにそうで、日本人の学力順位は、小学生の時には高く、大学生ではかなり低くなる。あーあ。