今読んでも面白い
(2008-07-07)
この本が出版されたのは昭和62年(1987年)で今から20年以上前になる。その後業界紙の世界を扱った本が出ないので現在はどうなっているのか見当がつかないが、平成12年(2000年)にちくま文庫からこの本が復刊しているところを見ると、業界紙を扱った本としてはかなり貴重なものであるのだろう。
この本では12の業界を載せている。ジャンルはホントに様々で金融、航空・防衛から、こんにゃく、音楽まで硬軟いろいろ取り混ぜてある。もちろん面白いのは業界紙そのものより業界紙にまつわる人間たちである。社会の日の当たるところを歩いてきた人間ではなく、裏のある、一筋縄ではいかない、したたかな人間が何人も登場する。取材お断り、履歴はうそばっかり、自分勝手な欲望の塊みたいな御仁たち。葬儀業界紙をいろどる人々の人間ドラマは圧巻。最後の書評紙では女優吉永小百合さんのお父様が関係していて、小百合さんの芸能界デビューのきっかけが紹介されている。
業界紙の諸君は・・・
(2006-01-27)
私が佐野眞一を知ったのは、今から約20年前に手に取った本書(単行本)であった。
本作は、業界紙の人々を扱った著者の初期の作品であるが、その後の、スタッフも使い膨大な資料を基に書かれた大作「巨怪伝」「阿片王」、あるいは時の著名人を描いた作品(「凡宰伝」「小泉純一郎」「てっぺん野郎」)とは異なり、登場するのは市井の人物ばかりである。
しかし、彼らは著名人に勝るとも劣らない、うさんくさい魅力ある人達ばかりである。・・・だが決して友達にはなりたくない人達ではある。
著者は、この作品で、業界紙を通じて日本の”業界”を論じているが、それ以上に、業界に住む人達の面白さと、それを取材している(取材が拒否される場面もあるが)業界紙出身の著者の姿が目に浮かんでくる、著者の汗と体温が感じられる作品であった。
特に、蒟蒻新聞を発行する孤高の老ジャーナリスト、金融機関の職員なら誰でも知っているニッキンの胡散臭さ、ウナギをめぐる2業界紙の対立が描かれた章はお勧めである。