どの世界でもほじくり出せばいろんなことが出てくる
(2008-11-04)
週刊誌ネタの総集編といった感じで、お手軽に読む本。中学生の有望選手が、どのように進路を決めていくのか、また、どんな争奪戦が繰り広げられているのかがよくわかった。
一番印象に残っているのが、茨城県のある(弱小)定時制高校が硬式野球にこだわる理由と言う話である。心を打たれた。
さほどの汚さを感じない
(2008-07-13)
主にボーイスリーグから高校野球にいたる、選手の仲介ビジネスに焦点をあてて、取材した書。
もっと、裏のドロドロした実態を、これでもかこれでもか、と見せるのかと予想していたのですが、違いました。
著者自身、そういうことはあって当たり前のこと、と考えているか、あるいは、読んだ私の方に、それもやむをえない、という考えがあるせいかもしれません。
私は昔、甲子園野球というものが、神聖なアマチュアの大会であると信じていました。
しかし、野球留学など、セミプロ的に行われていることを知り、見る気がしなくなりました。
この本を読んで、また少し考えが変わりました。
問題なのは、甲子園野球を「アマチュアの頂点」だの「さわやかな高校球児たちの祭典」だのとはやし立てていることではないでしょうか。
むしろ、「プロ野球マイナーリーグ全国大会」「プロ野球高校リーグ甲子園大会」と謳えばよいのです。
考えてもみてください。
勉強のできる子を持つ親は、子を塾に通わせ、私立の名門高校に入れ、有名大学を目指すでしょう。
特待生として入学金免除、学費免除、という特典もあるかもしれません。無利子の奨学金も借りられるでしょう。世紀の天才といわれるような子供なら、企業がスポンサーにつくかもしれません。
野球だって、同じと考えたらいいのです。
野球の上手な子供を持つ親は、ボーイズリーグという野球塾に、子供を通わせます。
ボーイズリーグの監督が高校入学の面倒をみてくれます。学費の免除もあるでしょう。生活費を出してくれるところもあるでしょう。
実際、現在プロ野球ナンバーワンの投手が、そんな道を歩きました。
それは責めるべきことでしょうか。
勉強にしろ、野球にしろ、自分の得意分野で、せいいっぱい人生を切り開いている、と見ることはできないでしょうか。
いろいろ、考えさせられた本でした。
野球ーすーるならこういう具合に、するっ!
(2008-04-11)
高野連と日本のプロ野球が仲の悪い要因をご存知だろうか?ソレもこの話の一端。最近でも問題になった金銭や物品のやりとりや怪しい隠れた関係はなぜそのようなカタチなのか?アマチュアがプロに野球が教われない現状。ドラフトの準備と裏側。当事者達の言葉を聴いて野球会の危うさを知ろう。見ざる聴かざるでは状況は好転しない。
悪人と善人が共存する不思議な世界
(2008-03-20)
野球留学、特待生問題などで「清く正しく」というイメージが失墜した高校野球。うわさやゴシップ的に語られてきた、その特待制度の実態や金をもらって高校と中学生を結びつける「ブローカー」の存在を明らかにした。これはという生徒に「パンツ一枚で来れば後は面倒を見る」と豪語する高校や、学校選びの際には拝み倒して、後は知らん顔の監督など、教育とは思えない、高校野球の醜い実態をつづる。著者も示唆しているが、引退後きちんとした職業指導を受けられず、野球で生きるしかない元プロ選手が、「プロ」の夢をえさにして、やや技術の劣る子供たちを釣っている。きちんとした倫理、職業指導が必要だと感じた。
本書は高校野球の暗部をえぐる一方で、青森・光星学院や鹿児島・神村学園など急速に力をつけている学校を取材し、高校野球を通じた人間教育の美しさも書いた。明徳の馬渕監督や駒苫の香田監督など、ヒールイメージが定着した名監督にも取材し、そうした実像が、いかに作り上げられたもので、彼らが休みも金も惜しまず献身的な指導で少年たちを全国へ導いてきたかを示した。プロもそうなのだろうが、アマ野球には、子供たちを利用して金づるにする悪人と、子供たちに夢を与えたいという献身的な大人とが持ちつ持たれつの不思議な共存をしていて、病根の深さを感じた。
いい話、悪い話とも、読ませる内容で楽しめた。
高校野球論の最高峰
(2008-03-12)
昨年の西武裏金騒動に端を発した特待生騒動で改めて世間の耳目を集めた「高校野球とカネ」。大マスコミにとって賞味期限の切れたこの問題について鋭く迫った本書の内容は永久保存版の価値がある。
冒頭、明徳義塾・馬渕史郎監督他の口から語られる(なぜ馬渕監督かは読んでのお楽しみ)ダルビッシュ有の東北高校への真に迫る進学裏話から読者は著者の高い取材力と分析力に驚愕させられ、グイグイと本書に引き込まれることになる。野球オヤジたちがネット裏談義で実しやかに語る噂話などが、見事に裏付けられていく筆致の冴えは痛快の一言に尽きると言ってもよかろう。
「裏」ビジネスの「入り口」として語られるボーイズリーグ論はよくぞここまでという丹念な取材の成果が満遍なく発揮されており、同時代としては当然であるが後世への資料的価値も極めて高い。ダルビッシュの項と私の表現は重複するが、噂話レベルの「暗部」を著者の持てる人脈をふるに発揮して実証していくその叙述は、ジャーナリズムとして最高峰のレベルに達している。
本書の最後で触れられる自民党・高校野球特待生制度問題小委員会と高野連との丁々発止の描写についてはさらにセンセーショナルな要素を含む。自民党側から「特待生廃止」に突き進む高野連に楯突いた議員連の中心にある「作新学院閥」。見方によっては特待生騒動が政府自民党をも巻き込んでいった要因として、自民党文教族による利権主張という側面があったとも裏読みすることができる。巻末に付された自民党小委員会から高野連に送られたメッセージは、その事実を雄弁に物語るものともいえまいか?