大人のいない国―成熟社会の未熟なあなた (ピンポイント選書)
俯瞰的あるいは立ち位置を変えて眺める重要性
(2008-11-11)
例によって内田さんのブログから編集者がまとめたもの。
1章 制度の起源に向かってーーー言語、親族、儀礼、贈与
2章 ニッポン精神分析ーーー平和と安全の国ゆえの精神病理
3章 生き延びる力ーーーコミュニケーションの感度
4章 日本辺境論ーーーこれが日本の生きる道
こんな流れで進むわけです。
出来の悪い中年オヤジとしては読めない漢字や意味が分からない言葉に翻弄されながら分かる範囲で読み込むしかないわけである。
今回のお勉強としては。
両論併記の適否の一定間留保、誤りから学ぶこと、「格差社会」とはいうのは、格差が拡大し、固定化した社会というよりはむしろ、金の全能性が過大評価さらたせいで人間を序列化する基準として金以外のものさしがなくなった社会のことではないのか、現代日本の家庭では「苦痛」が換金性の商品として流通しているのである、人生はミスマッチである、真の愛国者は決して「愛国心」などということばを口にしない、等々である。
三丁目の夕日は日本に戻って来るのか?
(2008-08-31)
大ヒットした映画『ALWAYS 三丁目の夕日』で
描かれた昭和30年代(1950年代)・・・・
脱臭され美化された虚像であるとの批判が
実際の30年代を知る人々からなされているようですが、
内田氏の言う
「生活は貧しいし、国際社会でも相手にされない
三等国だけれど、全員が飢えるとき以外には
ひとりも飢えないような暖かい社会。」という
一面は、豊かに描かれていたのではないでしょうか。
「格差社会」の是正を金で解決しようとする愚かさを
説いているあたりには、これからの時代を生き延びていく
ための指針を見たような気がしました。
浅羽通明『昭和三十年代主義』と共鳴しています。
真にラディカルな思想家の日本論
(2008-08-25)
内田さんの思想は倫理学者エマニュエル・レヴィナスに影響を受けているだけあって、「他者と共に生きる」とか「礼を重んじる」といった倫理的なことが書かれています。道徳とか倫理とか聞くと鼻白む人もいると思うけど、しかし一方で、というべきか、と同時に、というべきか、内田さんは発想の仕方と結論がそこら辺の自称ラディカリストさんよりもよっぽどラディカル(=過激・根本的)なことも書いています。しかもあくまで当たり前のことを書いてるかのような柔らかい文体で。
「改革をやめろという方がよっぽどラディカルでアクティヴなスローガンなのである」(269p)とか「「ただちに変革を」というような定型的な言いかたをこそひとつ「ただちに変革」されてはいかがであろうか」(255p)といった具合に。
ぼくは割と「人はもっと自分勝手に生きてもええんじゃないか」などと思っているんですが、各テクストのタイトルや書き出しの主張に「へ?」と思っても、文章を読んでるうちに内田思想独特の論理展開に引き込まれ、各テクストを読み終わる頃には「そうかも・・・」と納得させられてしまうのでありました。
内田さんの文章を読んでると、倫理とラディカルであることって矛盾しないんだなあというか、「矛盾を矛盾として生き、引き裂かれてあることを存在の常態とするような人間の成熟(228p)」みたいな話は何度か登場するのですが(55年体制支持とか愛国者は愛国を語ってはいけないとか)、これが内田さんの思想の根幹なのかもしれません。
いつも手の届く範囲において何度も読み返したい本です。
珠玉のユーモア・エッセイ集
(2008-08-25)
一見すると、現代社会をまじめに批評した論考のようですが、よく読んでみると、そこかしこにナンセンスやパラドクス、論理的なズレが(意図的に)埋め込まれており、運良くその地雷を踏むと笑いのつぼにはまる、という仕掛けの本です。難しい言葉も多く使われていますが、そのぶんレベルの高い上質のユーモア・エッセイに仕上がっていると思います。
ユーモア・エッセイは性に合わないと言っていた友人も、この本のユーモアはわかる、面白い、と絶賛していました。
発想の転換のきっかけになりそうな本
(2008-08-19)
アマゾンの内容紹介文を見て買ったが、内容はおどけた口調で書かれているものの難解で読みずらい部分もあり(特に第1章)消化不良という感想だ。著者の考えは多数意見の逆説を行くような感じで例えば女性差別についても男に価値がないから(生物学的には女100人に対して男一人でバランスが取れる)男に不当な高い価値が付けられて来たのが理由だとか。また原理主義の逆で人生を機嫌よく生きるためには物事にこだわらない、プライドを持たない、被害妄想にならないの三点が大事だそうである。個人的に参考になるのは自分が嫌になっても一気にリセットしようとせずに冷静に何処を直していけばよいかを考えることか。著者は真の意味でインテリでエリートであると思われるので弱者の自分にはあまり参考にはならないが発想の転換のきっかけを与えてくれる本かも知れない。